6mm方眼ノート

方眼紙に書くと、なんとなく、普通の紙に書くよりも整理できるような気がするよね。

冷静に観たら「熱闘甲子園」はえげつない制作物だった件

何年も前から、酒の席の話題にしていたのですが、

熱闘甲子園」の制作物としてのえげつなさ

について、ちょっと皆さん、聞いてくださいよ。

 

あの番組ね、エグい。えぐいよ。えげつない。


▼ えげつなさのサマリ

1,ものすごい数のカメラで、ものすごい量の「当日素材」を撮っている

2,「当日素材」も使って、当日夜オンエアの30分番組を、毎日つくる

3,「事前取材の素材」もしっかり用意してある

4,原則、1試合のレポートは「どちらかのチーム」にフォーカスが当たる

5,フォーカスは「勝ちチームにも、負けチームにも」当たる

6,敗チームの素材は、その時点で基本的には「不要」になる

考察 : どうやって「フォーカスする側」を決めているのか

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1,ものすごい数のカメラで、ものすごい量の「当日素材」を撮っている

 

巨人戦の中継よりも多いんじゃないか?というくらい多くのカメラが、甲子園球場

・試合中の選手
・ベンチ
・アルプススタンドの補欠、応援団

を撮影しています。
制作会社さんは大変だなぁと。

 

2,「当日素材」も使って、当日夜オンエアの30分番組を、毎日つくる

 

で、その素材も利用して、当日夜のために30分番組をつくるわけですが

試合内容によって、利用できる素材が異なってきますよね。
きちんと試合内容も加味して、見える形にしなければならない。
当然ゼロから構成するわけにもいかないので、ある程度の構成は「アタリをつけておく」必要が出てきます。

そこで必要になってくるのは「事前取材の素材」です。

  

 

3,「事前取材の素材」もしっかり用意してある

 

全出場校ぶん、おそらく素材は揃えてあることでしょう。
ここは地方のテレ朝系列局などにも協力いただくのでしょうか?

もし東京から素材撮りに出向いてるとしたら、すさまじい労力ですわ。

予選や過去大会の試合映像などは、強豪校、注目選手だけ押さえておけばいいのかもしれません。しかし大穴が活躍してしまった場合などは、後追いで駆け回って映像素材をつくるのかもしれないですねぇ…
 

 

4,原則、1試合のレポートは「どちらかのチーム」にフォーカスが当たる

 

 ここからの要素がえげつない。

 オンエア観てればお気づきでしょうが、得に1~2回戦の試合は、

対戦する両校が均等に紹介されることは無く、
原則としてどちらか1校を主人公としてストーリーが展開していく。

A校vsB校、と右上の字幕には出ているものの、
完全に「どちらかの高校」のストーリーしか描かれておらず
フォーカスが当たらなかった方は完全に「モブ扱い」であり
風景と化す。
えげつない。
  

5,フォーカスは「勝ちチームにも、負けチームにも」当たる

 

では「どちらのチームにフォーカスが当たっているのか」という問題。

昔はね、ほとんど、「負けチーム」にフォーカスが当たっていたと思うんです。 
でもね。
最近、そうでもないようなのです。

2017年8月某日、オンエアで1回戦が4試合放送されました。

 1試合目 フォーカス「負けチーム」

 2試合目 フォーカス「勝ちチーム」

 3試合目 フォーカス「勝ちチーム」

 4試合目 フォーカス「勝ちチーム」

 

…お い マジか。
実に3校が勝ちチーム側にフォーカスが当たっている。

甲子園を去る「負けチーム」について放送されたのは最初の一試合だけ。

残りの負けチーム3校についてのエピソードは特に紹介されることなく、
完全にモブとして番組を下支えする羽目になっているわけだ。

 

そう、「甲子園に出る」=「熱闘甲子園に出れる」わけではないのだ。
えげつない。

 

6,敗チームの素材は、その時点で基本的には「不要」になる

勝てば次の試合があるわけですが、負ければそこで終わりの甲子園。

勝ちチームはまだまだ番組の登場人物でありつづけるのですが、
既に甲子園を去ってしまう負けチームの素材に、ついては
もう「いらない」のですよね。
事前取材のテープも、当日のテープも、もう、ほぼ、使わない。

日が進む毎に、「使わなくなる素材」がどんどん増えていく。

「フォーカスされなかった敗者チーム」の素材に至っては、
ほんとうに1秒も使われることなく、消えていくことになる。

なんというか、えげつない。
熱闘甲子園の制作現場、えげつない。


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考察 : どうやって「フォーカスする側」を決めているのか

なんか、観ているこっちとしては、
「負けチームにフォーカスあててあげたい」
っていう気持ちになっちゃうんですよね。

だって勝ったらまだ先があるじゃないですか。
甲子園の大会そのものだって、そうじゃないですか。
彼らの終わってしまった 夏 に、
フォーカスあててあげれば、いいじゃないですか。

ずっと負けチームのレポートをしていたら、
「優勝校以外の全出場校」にフォーカスが当たることになるんです。

実際のところ、準決勝あたりから、放送時間の尺に余裕が出てくるので
両校にしっかりと時間を使うことができる。

つまりは「全ての学校のエピソードを紹介する」ことが、
理屈の上では可能なはずなんですよ。


しかし実際の制作現場では、そうはなっていない。
負けチームを意図的にフォーカスしているわけではない。

じゃあ、いったい、
なにを基準にフォーカスを当てるチームを選んでいるのか。

ズバリ、「事前取材」の結果として
 ・絵になる素材
 ・扱いやすいトピックス
 ・ドラマチックなエピソード
が取れているほう、だろう。

 

熱闘甲子園』の制作現場はハードに違いない。

試合結果を待ってから、当日の30分番組の本を書くなんて、
しかも毎晩のようにそれを続けるだなんて、
人間業ではない。


「製作者の都合」で「作りやすいほう」にフォーカスが当たるのは
正直、しかたがないし、当然だ。
制作サイドを否定・批判することはできない。

熱闘甲子園』は、敗者にカタルシスを与えるためにあるんじゃない。

高校野球を素材に30分のエンタメを作っているだけだ。
われわれ視聴者もエンタメとしてそれを楽しんでいる。
部活でもなければ教育行為でもない。


でも、
だとしても、
「なんで 勝ちチーム 目線 やねん!!」と
クダを巻かずにはいられないのです。